税率格差をなくしフラット税を実現しよう

 昨今の景気後退のによって,世の中には弱者救済と財政再建の美名のもとに,所得税の累進性強化を唱える言説が大きくなってきている.定額給付金子供手当に対する所得制限がその一例であろう.(幸いにも鳩山首相が社民国新の反対を押し切り所得制限の付けないことを決断したことは評価している)しかし,僕はあえて,所得税の累進性をなくし,フラット税を導入すべきと考える.



 上記は,所得税の累進性が高ければ高いほど,高所得者になろうとするインセンティブ(誘因)が小さくなることを示している.高所得者になるためには人間は次のような行動をとるだろう.
 あるエンジニアは,その分野で評価されるような資格の取得を目指すだろう.あるプログラマは扱える言語を増やしたり美しいコードを書くための勉強を強化するだろう.ある研究者は余暇の時間を減らし,研究をする時間を増やすだろう.すなわちこれらによって,社会の生産性は向上していくのである.
 長期的には,人々が豊かになるためには生産性の向上が不可欠だ.つまり,できるだけ安く,できるだけ良いものやサービスを生産するのである(ヘリコプターからお金を撒いてもそれは一時的な効果にとどまる).例えば,安くて良いものを日本で生産し,海外に大量に輸出すれば為替は円高なり,海外の安い食料品はもっと安くなり,低所得層も潤うのである.
 さらには次のような効果ももたらす.ある高所得者は税金が高いことから何人かの優秀な弁護士を雇い,節税に多くの資源を使っていたが,税率の低下でそのような必要がなくなるのである.また,多くのシンガポールや香港への移住を考えていた高所得者は,その計画を取りやめるだろう.いまや,シンガポールは国家戦略として高所得者の優遇を行っているのである!さらには,最近の先進国の所得税最高税率は減少傾向であり,フラット税が旧共産国を中心に増えてきているのである.
 また,昨今話題となっているベーシックインカムであるが,これを導入する際の最大の問題は,労働のインセンティブをどう確保するのかということである.フラット税により,労働のインセンティブを確保することが,ベーシックインカム導入の必要条件になると僕は考える.
 これらの理由から,フラット税や,累進性の低い消費税の比率を増やすことが合理的なのである.

参考

3つの小さな政府と川田龍平議員入党

 小さな政府という言葉には様々な意味があるので,一度整理しておきます.
1.社会保障の大小
 具体的には,年金,医療,介護,教育,生活保護などであり,一般にこの部門の削減は国民の同意を得られにくいです.混合診療解禁などの,規制緩和による市場原理の導入による削減を目指すべきと考えています.しかし,政治的に困難なため,僕はそれほど重視していません.
2.規制の大小
 この小さな政府は,オープンスカイ,減反貸金業法借地借家法,解雇規制などの規制改革による,激しい競争によって生産性の向上を図り,経済成長を遂げる戦略です.僕はこれを一番重視しています.上げ潮派みんなの党が積極的です.
3.国営事業の大小
 こちらは主に,公益法人独立行政法人の廃止・縮小・民営化や,財投債改革や公務員制度改革を行うものです.上げ潮派みんなの党民主党が積極的です.こちらはほとんどの政党が賛成でしょうから,選挙の争点にはなりにくいでしょうか.
 小さな政府にも様々な評価軸があります.みんなの党マニフェストを読むと,1については中庸,2については若干小さな政府,3については非常に小さな政府というように読めます.川田議員が強調するのは,1の医療分野であって,それほどみんなの党と矛盾するものではありません.むしろ,脱官僚アジェンダを共有していることを考えれば,みんなの党は強力な仲間を得られたと考えられます.

リバタリアニズムとは何か

 リバタリアニズムとは自由至上主義とも訳されますが,個人の自由を重視する思想です.すなわち国家の社会や経済に対する介入をできるだけ小さくするもので,小さな政府を信奉しています.例えば僕の政策的な立場は,政治的には,中絶,同性愛,売春,賭博の容認や死刑廃止などで,経済的には,減税,規制撤廃,公共事業削減,公的年金・医療の廃止,インフラの民営化などです.福祉については,国家のナショナルミニマムは否定しませんが,寄付税制の拡充によるNPOの活用や,地域社会による福祉に頼ることになります.即ち,「小さな政府と大きな社会」です.
 リバタリアンは,まず自由な社会を支持しており,国家権力による市民に対する強制を嫌います.自由とは他人に迷惑をかけない限りは何をしてもよいということです.例えば,国旗国歌の押し付けは拒否するし,表現規制にも反対します.しかし,個人が国旗国歌への忠誠を誓う自由もあります.重要なのは,ある価値観の押しつけが行われないことです.

 したがって,市民に強制力を行使する国家の存在を,必要悪ととらえています.国家権力は民主主義によって運営されていますが,すべての国民のためによりよい政治を行うことはありえず,一部の団体や勢力に再分配が偏ってしまいます.そこで,できるだけ神の見えざる手を利用した資源配分を行うことが,結果として市民の福祉の最大化につながると考えています.

参考

リバタリアン宣言

山内康一ブログ蟷螂の斧「大きな市民社会をつくる!」

管副総理の「第三の道」

 最近経済における「第三の道」を考えている。
 つまり60年代の日本の高度成長はなぜ可能だったのか。そして80年代後半のバブル崩壊以降なぜ日本は長期の経済低迷に陥ったのか。さらに、2000年代に入り進められた規制緩和など市場万能主義の小泉・竹中路線がなぜ失敗したのか。
 端的に言えば80年代以降、投資効果に低い公共事業に巨額の財政をつぎ込んだのが経済の低迷の原因。小泉・竹中路線は、リストラなどによる各企業の競争力の強化が社会全体の生産性向上になると考えたが失業を増加させ、社会全体としての経済成長につながらなかったのが失敗の原因。それでは過去の失敗を繰り返さない経済運営における「第三の道」は何か。現在、深く考慮中。

経済における第三の道

 一般的に第三の道といえば,ブレア政権における,新自由主義・市場原理を残しながらも,所得再配分等の福祉分野もケアする道であると,私は理解しています.これまでの民主党政権は,郵政の実質国営化など,小泉改革の全否定というような政策を行い,規制改革や法人税減税などの成長戦略に乏しいものでした.環境や林業のターゲティング政策だけで,日本経済の牽引を図ることなど夢物語です.
 やはり,子供手当などの再分配だけではなく,どのように企業の設備投資や投資家の投資意欲を高めるかを考えなければ,税収は落ち込んで行くだけだということに,管副総理は気付き始めているんだと思います.恐らく経済政策の司令塔を任される立場で,様々な意見を耳にし,「深く考慮中」なのでしょう.
 もちろん政権交代前に,そのようなことは議論済みであるべきなのですが,まともな方針もないことは事実です.ここで民主党は,結党の理念に戻り,改革政党としての方針を打ち出すことが重要です.例えば郵政に関しても,2005年当時は簡保は完全民営化,郵貯は実質国営での規模縮小による,市場主義(官から民への流れ)を支持していました.民主党が「第三の道」に転換するポテンシャルは十分に持っています.ここで,国家戦略室を,小泉安倍内閣における経済財政諮問会議のように使い,大規模な規制改革を打ち出せば,マーケットの空気も180度変わるはずです.それが,民主党政権が成功する唯一の道であると私は信じます.

デフレ認定は良いけど対策はどうするの?

 政府は20日発表した11月の月例経済報告で、日本経済は物価が持続的に下落する「緩やかなデフレ状況にある」と正式に表明した。月例報告で「デフレ」と認定するのは2006年6月以来、3年5カ月ぶり。国内経済は持ち直しに転じているものの、物価下落で企業収益の悪化や失業増大につながるリスクがあり、政府は雇用対策などに重点を置いた第2次補正予算案の策定を急ぐ。菅直人副総理は記者会見で「デフレ脱却には日銀にも協力してほしい」と注文をつけた。

政府月例報告「緩やかなデフレ」認定 3年ぶり

 政府はついにデフレ認定を行いました.2008年には原油高の影響もあり,コアCPI(生鮮食品を除く消費者物価指数)は2%を超えていましたが,コアコアCPI(コアCPIからエネルギー分野を除いたもの)は,1998年以降ほぼマイナスで推移しました.
 このように,2003年からの景気回復も弱含んだものであり,現在のデフレは日本経済に大きな負担となってしまいます.しかしながら,90年代の自民党が行ったような,亀井大臣の主張する強力な財政出動による景気刺激に頼ることは,国債金利上昇懸念もあって非常に難しいです.また,日銀に責任を押し付けても,白川総裁の発言からわかる通り,積極的な金融緩和を実行しないように思えます.従って,日銀政府が協力して,金融緩和,最低限の財政出動インフレターゲットによるデフレ脱却を目指すべきです.
 民主党は,日銀総裁人事で,日銀の独立性を守ることを強力に要求していたこともあり,日銀とのアコードは政治的に難しい状態です.しかし,未曾有の経済危機であるとの説明責任を果たし,実行しなければ,「鳩山不況」が現実のものとなるでしょう.

民主党の事業仕分けを大きく評価したら今年限りだったでござるの巻

 ネット上や一般メディアで,行政刷新会議による事業仕分けが様々な議論を呼んでいますが,私はこの事業仕分けを大きく評価しています.国の事業仕分けは,構想日本の提言から始まり,河野太郎氏の自民党無駄遣い撲滅プロジェクトチームによって2008年に初めて実施されました.このチームにはみんなの党山内康一氏も参加されていたそうです.
 民主党が,行政刷新会議を組織して,改革の一翼を担わせようとしていることは,構造改革・小さな政府を進めるうえで非常に重要です.さらにはこの事業仕分けを,ネット上にリアルタイムで配信したことは画期的といえるでしょう.
 しかしながら,山内康一氏も指摘するように実質的には財務省が仕切っており,ただのパフォーマンスであるという批判も上がっています.ただ,来年度の予算編成の年度内成立を考えれば,財務省が主導することも仕方ないのではないかと私は考えます.もちろん,政治主導を進めることは重要ですが,来年度予算編成にまでそれを求めるのは酷でしょう.
 また,科学技術費の削減についての批判もされています.国家による科学技術研究については,もちろんエネルギー・宇宙・環境や各種基礎研究など,国策としてやらなければならないものもありますが,基本的には民間に任せる方向性は正しいです.しかし,日本には寄付税制の整備が遅れていることも考えなくてはなりません.例えば,ふるさと納税を大学の寄付に振り分けられるようにしてはどうでしょう.現在の制度のまま,ただ研究費を切り下げるだけでは,大学がやっていけなくなり,競争力が低下することも考えられます.その配慮も,民主党は考えなくてはなりません.
 確かに,各論についてさまざまな問題が見えてくることはあるでしょうが,事業仕分けを拡大発展し,国の事業を地方や民間に移管したり,廃止することは,長期的な経済成長を確保しつつ,財政再建を進めていく上で非常に重要です.日本郵政人事院などの,「言ってることとやってることが違う」民主党の政策には失望していましたが,事業仕分けは批判に屈せず,改善すべきところは改善し,進めていくべきです.

参考:事業仕分けの論点(タケルンバ卿日記)
こちらも,総論賛成各論反対であるべきという論.財政支出の増大に関する危機感も同意.橋本小泉安倍内閣行政改革ではまだまだ不十分だ.

追記:首相、「事業仕分け」今年限りを示唆
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ハァ?

渡辺代表の日銀のローン債権買取り法案

 みんなの党は、政府が日銀に対し、地域金融機関も含め中小企業のローン債権を買取り要請できる法案を準備している。リスクを日銀が肩代わりすることにより、地域金融機関等の貸し出し余力は高まる。

 同時に、政府・日銀の物価安定目標を共有するアコードも、同法案の中に盛り込む。

11月8日ヨッシー日記

 さて,みんなの党ですが,亀井モラトリアム法案にも似た,中小企業のローン債権を買取り要請できる法案を準備しています.これにより,銀行に現金が供給されるので,当初のモラトリアム法案で懸念された銀行の貸し渋り等とは全く逆の効果を達成することができます.
 もちろんこれによって,ゾンビ企業が生き残るのではないかとか,銀行のモラルハザードについての懸念もあるでしょうが,それだけ需給ギャップが深刻だと判断しているんだと思います.
 さらには,インフレターゲットも法案に盛り込むことになりました.高橋洋一氏の影響もあってか,非常に金融緩和的な政策です.ニコ生やツイッターでも,私は日銀の更なる金融緩和を求めて来たので,この政策については,強く支持します.

 デフレは,投資よりも,現金や預金や国債で持つ方が有利なため,企業や資産家の投資意欲の縮小させ,日本経済の回復もままなりません.このままデフレを放置すれば,中長期の日本経済の成長力も毀損してしまいます.